トラブルの実際

依頼先が悪徳業者にあらずとも、自費出版に特有のトラブルが生じます。一番多く見聞きするのが、「本屋に並ぶと思っていたが一冊も見かけない」といった、流通の問題です。自費出版業者の謳い文句に多いのが、「全国に流通」、「全国の書店から注文」などといった誘いですが、一般書籍と肩を並べるように書店で目にすることができると誤解した著者が落胆するケースも後を絶ちません。自費出版の規模は、90年代の「年間数百点」と比べれば大いに拡大しました。インターネットの普及や定年後の自己実現欲求が影響したのでしょう。それと軌を一にして増えたのが自費出版専門業者です。大手の出版社のように流通のノウハウのないそれらの業者が簡単に書店の一角を占められるはずもなく、黎明期から彼らの営業手法には疑問の声が上がっていました。

著者は業者と契約を交わす際、書店への配本に強いかどうかを確かめる必要があるのですが、皆そこまで気が回るわけでもなく、費用の相場についての知識も無いのが普通です。応募したら質問事項を用意し、打ち合わせで疑問を解消しなければなりません。繰り返しますが、業者が詐欺と断言できるような行為をはたらくことは滅多にありません。契約後に追及されても大丈夫なように、「書店に並べられるように努力するとは約束したが、絶対に書店に並ぶとは言っていない」といった逃げ口上くらいは準備しているものです。

その他のありがちなトラブルとしては、大幅な校正を巡るやり取りが挙げられます。自費出版のほとんどはライターを雇わず、業者の編集担当と何度も原稿を交わして校正を繰り返します。自費出版しようなどと考える人の多くは文章力に多少なりとも自信のある人達ですから、絶え間のない校正は屈辱だと感じ、担当者を恨む気持ちも芽生えてしまうというわけです。